【富田林市】地車を彫ることが何よりもの誇り。美具久留御魂神社近く、南河内唯一の地車彫師・彫陽さん(2025年2月13日アーカイブ記事)

インタビュー記事

南河内ニュースの限定情報などより詳しい情報を毎日18時にメールでお届けします。

※アーカイブ記事なので情報は掲載当時のものです

地車(だんじり)は岸和田だけではないことは、南河内在住の者にとっては当然のことですね。しかし現実問題として、地車の彫り物を作り上げる職人さんのほとんどは、岸和田周辺に工房を持っているそうです。



「PR」


「PR」

(LOVEとんだばやしに出店)

しかし、富田林にも地車工房があるのをご存じですか?それは、美具久留御魂神社の近くの地車彫師「彫陽」さんです。



「PR」


「PR」

(小塩町の地車の彫り物)

昨年河内長野の小塩町で地車を間近で見る機会がありましたが、本当に精巧にできていて「動く芸術作品」という印象がありました。そんなこともあり、機会があればいつか地車の彫師の方を取材したいと思っていました。

「PR」

そして秋祭りの季節から少し離れていますが、今年の2月にご縁があり、ある方の紹介で彫陽さんを取材することができました。

取材当日、約束の時間に工房の中に入ると、彫陽の代表である山本陽介さんがちょうど作業をされていました。作業自体はその場ですぐに終わってお話が伺えたのですが、このとき「今作業している彫り物についてはボカシを入れて欲しい」と言われたのです。今まで人の顔や車のナンバープレートなどへのボカシは入れたことがありますが、木彫りの作品にボカシを入れたのは初めてかもしれません。



「PR」


「PR」

山本さんは今、ある町会が新調する地車の作品を彫っているのですが、すべて完成したお披露目会まで非公開というのが理由だからです。そういうことひとつ聞くことで、地車を彫るという仕事の重みを目の当たりにしました。

「PR」

(すでに出来上がっていて、公開しても問題がないものを見せてくださいました)

山本さんは富田林喜志の桜井町に生まれ育ちました。小さな時から地車が身近にあった環境です。地車は秋祭りでその豪快な様子が魅力ですが、山本さんは祭りで地車を引くことより、幼いころから地車の彫り物にとても興味があったとのこと。

(生きているような躍動感があります)

山本さんのお祖父さんは、そんな山本少年のために、小さな地車を木で作ってくれたそうです。そうして山本少年は本気で地車の彫師になりたいと考えるようになり、中学のころには彫刻刀で見様見真似で木彫りを行うまでになっていました。



「PR」


「PR」


(鋭い表情を作り上げる、瞳などに色を塗るのも彫師の仕事)

高校生になると、今度は岸和田に通い始めました。岸和田の図書館には地車の彫師の住所などが書いてある書物があり、山本さんは1軒1軒電話を入れて、OKをいただいた彫師さんの工房を見学させてもらいました。それを月1回のペースで続けたのです。

「PR」

(指一本が誤って折れても台無しになる細かい技術)

そういう見学と並行しながら、自らノミを持つ練習も欠かしませんでした。そうなると、進路は決まったようなもの。高校卒業後、 18歳で正式に岸和田の名門、ふたりの師匠(筒井師、岸田師)の元に入門することになりました。

弟子入りしての最初の仕事は、道具の研ぎからです。木彫りのために必要なノミが切れないと話になりません。彫師が使用するのには様々なノミがあります。主に兵庫県の三木市で作られているノミで、1本万円単位のものもあり、全部で100種類くらいはあるとのこと。山本さんは高校生のころからアルバイトや時には親からの援助もあり、少しずつ自分のノミを集めていたそうです。

「PR」

(瞬時に胸ぐらをつかまれそうな勢いを感じます)

修行時代の仕事の流れを伺いました。朝いちばんに工房の掃除をして、親方(師匠)や先輩方を迎え、10時ごろにコーヒーを、お昼には弁当を用意し、合間合間でお茶を入れるような下積み生活を行っていたそうです。



「PR」


「PR」

高校生のころから通い詰めていたこともあり、いきなり何も知らない段階からでは無いため、比較的早い段階から彫らせて頂くことができたという山本さん。最初のころは、荒彫が終わってからの仕上げの段階の彫りからスタートしたそうです。

(板の大まかに切断する際に、糸鋸も使用します)

掘っていく作業の順番は、大まかに次の通りです。

「PR」

  1. 板を用意する
  2. 下絵を描く
  3. 立体的に彫る(荒彫)
  4. 綺麗に仕上げる

このなかで、3.の行程は親方が主に行います。絵を立体的に彫り上げるのは、非常に難しいとのこと。



「PR」


「PR」

そして2.の下絵を描く時には、トレーシングペーパーを使います。これは板にだけ、下絵を描いても彫って行けば消えてしまうので、その都度トレーシングペーパーと見比べる必要があるからです。

「PR」

工房には歴史的な絵巻物や絵・イラストの本などが多くありました。完成デザインの参考にするためです。地車のデザインを考えるには、作成テーマとなる歴史的逸話を正確に理解することが必然で、その歴史も学んでいかなければなりません。そうやって考えた地車のデザイン、何をどう彫るかをクライアントである町会に提案し、要望を聞きながら決めていきます。

独立する前の思い出として山本さんがいちばん嬉しかったことは、親方が自分の地元、喜志町の地車を新調する依頼を請け負ったこと。その一部を任されたときは感無量だったそうです。

こうして10年の修業を経て、15年前の2010年に山本さんは独立します。ちょうど独立の時に東大阪の地車新調の話があったのも良いタイミングでした。



「PR」


「PR」

通常は独立しても、地車の本場と言える岸和田市内で工房を構えます。しかし、山本さんは当初から「生まれ故郷で」との思いが強く、南河内・富田林の地に唯一と言える地車彫りの工房・彫陽さんを立ち上げました。最初は中野町で工房を構えたのち、現在地に変わります。

「PR」

ちなみに大阪府内には30人くらいの地車彫師がいるとのこと。新調を受けると4年くらいかけて造るそうですが、地車1台当たり家一軒が買えるほどの金額がするとのこと。ところが岸和田になると「ブランド力」がつくのか、桁がひとつ違うそうです。

(平成30年の川面町の地車新調)

とはいえ、新調の地車の受注は簡単には取れません。その理由として山本さんは次のように述べました。「町の地車新調は早くても数十年に1回、通常は100年に1回なので、おそらく生きている間に、その町の地車の新調は1回だろう」とのこと。新調以外の大修理の依頼は少なくなく、来年には泉大津市「田中町」の地車大修理を予定しているそうです。

「PR」

そして地車以外の仕事では、東大阪のふとん太鼓や泉南地域にある「やぐら」の依頼も受け付けているとのこと。さらにそういった大型のもの以外、木の看板や置物なども、彫刻であれば作ってくれるそうです。

今回拝見したものや、以前間近で見た時の地車の各部分での彫りの技術が驚くほど勢いを感じるものばかりでしたので、そういった技術を使った小物類も、美術工芸品としての価値が高いのではと思いました。



「PR」


「PR」

(河内にわか)

ところで多くの地車は岸和田型のものですが、富田林や狭山、河南町などでは石川型と呼ばれる大型地車があります。石川型は正面が舞台になって俄(にわか)を演じるタイプ、別名俄地車ですね。

山本さんによれば、岸和田型と石川型では使用する木が違うといいます。通常岸和田型ではケヤキを使いますが、石川型はヒノキを使うとのこと。明確な理由はわからないそうですが、伝統的にそうなっているそうです。

「PR」

両者を比較すると、ケヤキの方が硬いので、彫り方も自然と変わるそうです。昨今は3Dプリンターなどの機械も出てきてはいますが、そういう機械彫りではなく、端正込めて、そして心を込めて行う手彫りこそ、地車の彫り物として大事だと山本さんは語ります。



「PR」


「PR」

(弟子の中村さん)

「地車の彫り物技術を継承して行かなければならない」と語る山本さんの横には、弟子の中村さんがいます。中村さんも富田林の人で、山本さんに憧れて弟子入りし、すでに14年のキャリアがあるそうです。

「PR」

(過去の秋祭り)

現在手掛けている新調の地車は間もなく完成で、今年の5月に入魂式が控えています。「今がラストスパートです」と山本さんは意気込んでおられました。そして「地車のある町は、親子以上に年齢の離れた者同士がつながりやすい。それは地域の防災面での安心につながる。この伝統を大切にしたい」と最後に語りました。



「PR」


「PR」

(彫陽さんから頂いたステッカー)

「地車を彫ることが何よりもの誇り!」そう言いながら取材の後も、すぐノミを片手に木の板に没頭する山本さん。地車を曳くのだけではなく、彫る立場として地域伝統の祭りに貢献されている姿は、改めて凄いと感じました。

「PR」

彫陽

住所:大阪府富田林市桜井町1-1-15
TEL:0721-25-0073
アクセス:近鉄喜志駅から徒歩12分
instagram



「PR」


「PR」

この記事を書いた人

奥河内から情報発信
大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。

南河内ニュースの限定情報などより詳しい情報をお届けします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました