千早赤坂村の担当になってからわかったことですが、金剛山は「こごせ」という異名を持っています。「こごせ」の由来を確認すると、役小角(えんのおづの:行者)が開いた金剛山の山上にある転法輪寺の山号「金剛山」を、地元の人々が親しみを込めて「こんごせ」「こごせ」と呼ぶようになったことに由来しているとされます。
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また文武天皇の時代に金剛山転法輪寺ができる前までは、ふたつの山の総称として「葛城山」と呼んでいたそうです。今は別々の名前ですが、かつては二上山のような関係だったと考えられます。
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さて「こごせ」の例ですが、金剛登山口(千早本道)の近くにあるトイレは「こごせトイレ」という名前がついています。それだけ千早赤阪村と金剛山の「こごせ」との接点が深いわけですが、最近「福芋こごせっ子」という「こごせ」の名前が付いた新しいサツマイモを村の名物として売り出そうという動きがあることを知りました。
大阪唯一の村で「こごせ」の名前を冠した名産品を
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(大和葛城山山頂からみた「こごせ」こと金剛山)
これはWithこごせコンソーシアム(外部リンク)が村の農家さんと企画しているもので、栗かぐやという品種の芋を昨年実験的に作付けを行なった結果、味も好評だったので、今年の春から本格的に栽培を始めようというものです。
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(カネコ種苗(株)の品種特性表の一部を参考に筆者が作成した表)
栗かぐやを調べてみると、これはカネコ種苗株式会社(外部リンク)が開発したオリジナルの交雑品種とのことで、他の品種と比べると上記の表のようになっています。なお肉質の「粉質」とは、「ほくほく」した芋で「粘質」とは「ねっとり」した芋という意味。栗かぐやは、やや「ほくほく」した芋の部類であることがわかります。

(シルクスイートを販売している直売所)
サツマイモの品種の今の人気トレンドは、シルクスイートに代表されるような「口当たり」がしっとり・ねっとり系の粘質の物ですが、昔ながらの「ほくほく」した粉質の芋が好きな人の需要に答えるために、「栗かぐや」を開発したとのこと。カネコ種苗は2021年に「HL1」という名前で品種登録を出願したそうです。
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(スイセンの丘も千早赤阪村の名物)
栗かぐやはこれまで関東で作付けが進んでいますが、関西ではあまり行われていませんでした。それに目を付けたのが千早赤阪村農振連絡協議会でした。この栗かぐやを村の名産品にしようと、昨年実験的に作付けを開始したということなのです。
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なぜ村でサツマイモを?

ところで根本的な疑問がわきました。なぜ村で「芋」を名物にしようとしたのでしょうか?とても気になった私は、Withこごせコンソーシアムを運営する株式会社アマテラスの川添友楓さんを通じて、千早赤阪村農振協議会の方と連絡を取り取材させていただきました。

なお、サツマイモそのものが日本に入ってきたのは江戸時代初期。8代将軍徳川吉宗の時代に普及が進んでいるので、籠城戦を得意とした中世の村のヒーロー楠木正成とは直接的な接点はありません。

お話は会長の平田さんと副会長の谷さんが対応してくださいました。まず千早赤阪農振協議会は、1999(平成11)年5月に村で農業を営んでいた方を中心に60名の会員で発足しました。同じ年の7月には直売所を併設して村で採れた作物を販売し、当初はそれなりの売り上げがありました。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
やがて平成時代も終盤になると、直売所や道の駅などが周辺に次々できたことが影響し、売上が下がりました。そして高齢化の影響もあり会員数が減少、さらに輪をかけるようにコロナ禍が直撃してしまい、直売所を閉鎖する事態になってしまいました。
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(芋以外のものも栽培しています)
直売所は閉鎖されたものの、せっかくできた農振協議会については村で長年培ってきた農業技術や果樹園や田畑の資産の継続や維持、そして村の農業分野の発展に力点を置く組織体としては存続することとなり、今年の1月の時点で29名の会員数がいます。

ちなみに村には道の駅ちはやあかさかがありますが、農振協議会としてではなく、個々の農家さんが野菜を卸しています。これは他の道の駅(かなん、くろまろの郷など)でも同様とのこと。

そんな農業振興会が、村の名物にしていきたいということで、サツマイモを取り上げたのです。背景には農産物として育てやすいということがありました。米などは、栽培や刈り入れに必要な機械を用意したり、水管理、害虫対策などを行ったりするなど、結構手間とコストがかかります。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
それに対して、サツマイモは比較的栽培が容易で、土の中で勝手に育ってくれるもの。イチゴやブルーベリーなどのような派手さはないものの、千早赤阪村の農家の高齢化のことを考えると、あまり負担のかからないものが良いという事情もあります。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
ウイルスフリーの苗を使って作付けするので病原菌を恐れる必要はなく、6月ごろになれば大量に芋ができます。1本で7~8個の芋が取れるそうで、伸びた弦をカットして植える(挿し穂)で増やすことも容易であるとメーカーからも認められています。つまりコストが下げられるという狙いもあるそうです。

(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
またサツマイモの中でも栗かぐやは、関東で人気が高まっているのに対して、関西ではあまり作付けがなされていなかったことも大きな追い風となりました。こうして昨年試しに作付けを実施。15人の農家により800平方メートルの畑でテストを始めました。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
とはいえ、初めての試みには不安もあり、「正直本当に大丈夫かな?」との気持ちもあったそうです。しかし、蓋を開けてみると想像以上に良いものが出来上がりました。千早赤阪村は地域によって標高差が大きく異なります。しかし、異なる標高差の畑で作付けしてもそれに対する影響はほとんどなかったそうです。

そして肝心な味です。「食べてみて欲しい」と、実はサンプルを特別に頂くことができた私は、実際に味わってみました。確かに紹介の通り「昔ながらの芋」というのが正直な感想でした。蒸してみると、割った中身の黄金色が月のような輝きを持っており、口に含むと栗のような味わいと「ホクホク」した食感。とても美味しくいただきました。
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また煮崩れしにくいので、煮炊きなどの料理にも適していているとのこと。他にもサンプルとして無料で提供した方々がいるのですが、みなさん高評価で有料でリピーターになってくれる人が多かったそうです。そのため収穫された芋ががあっという間に無くなり、在庫もわずかになってしまうほどの人気ぶり。他にも様々な料理やお菓子などへの応用がききそうな気がします。いずれにせよ、村の名物として売り出せる可能性が高いことがわかったので、今年から本格的な作付けと収穫を行う方向で話がまとまったのです。
土がついているから価値がある「福芋こごせっ子」

名物として売るには販路が必要です。大阪唯一の村から大阪市内はそれほど遠いわけではないので、十分販路として魅力的でした。とはいえ農振協議会は農作物を作るプロですが、売るプロではありません。そこで川添さんが営業担当として大阪市内を中心に都市部に販路を構築している最中だったのです。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
川添さんは「こごせっ子」を村で育てられた娘ということで、販路先にお嫁入させるという気持ちで各拠点を回ったそうですが、その際に担当者に驚かれたのです。「なんで土がついたまま汚いものを持ってくるの?」と。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
スーパーなどで販売されている芋と言えば、土がついておらず綺麗に洗って紫色の皮がよく見える状態で販売していますが、本来あの状態というのはサツマイモにとってあまりよくないといいます。どういうことかと聞けば、洗ったサツマイモは早く消費しないと腐ってしまうのです。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
サツマイモを詳しく調べると、原産地は中南米で本来は熱帯性の作物です。そのため日本の冬のように寒くなる(摂氏9度以下)になると、寒害で腐敗します。逆に温度が高過ぎ(摂氏18度以上)になるとと芽が出てしまい、芋の養分が消耗してしまうそうです。

(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
そのようなこともあり、サツマイモを大量に保管する際には土の中で貯蔵します。そして少量で保存する際にもやっていけないことに「水洗い」があります。水で洗ってしまうとサツマイモの表面が濡れますが、その状態になると表面からカビや雑菌が繁殖しやすくなるのです。
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(リニューアル前のサバーファームでもサツマイモ保管に関する注意書きがあった)
芋の皮も薄くてデリケートなため、洗ったときに発生した少しの傷でもつくとすぐに痛んでしまいます。だから土(泥)がついたまま新聞紙や紙袋で保存するのが理想的です。「だから、私は土がついたまま営業します。土がついているからこその価値を理解してほしいからです」と川添さんは力強く語ります。
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また、販路はスーパーよりも芋を使った加工品に使って欲しいので、企業さんを中心に回っているといいます。また本数よりkg単位で購入してくれる人を求めているとのこと。それには安定的な供給の意味もありますが、どのくらいの畑を栗かぐや作付けに使うかという問題もあり、将来的な村の畑を維持するか否かという問題ともかかわってきます。
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また販路先の企業さんは「村の名物が何かわからない」と言われることも多いのが現状です。栗かぐや・福芋こごせっ子をもっと多くの人に知ってもらえたらと願っています。

川添さんが、福芋こごせっ子への思いについては、福芋こごせっ子 – お嫁入Story –(外部リンク)に詳しく書いてあるので、参考にしてほしいのですが、その中で初めてのお嫁入り(契約成立)に関する記載を引用しましょう。
それは、条件や数量の話よりも先に「この子たち、うちでいただきます」
そんな一言から始まりました。
お値段の話でもなく、条件の話でもなく
まずこちらの “想い” が届いたことに
胸が温かく嬉しかったことを覚えています。
もちろん販売が目的ですが、上記のように「村から嫁入りさせる」という思いから単なる食品ではなく、一歩進んで村を応援してくれそうな企業さんに卸すことができるのが理想的だといいました。
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(画像提供:Withこごせコンソーシアム)
大阪唯一村の名産品として奮闘が始まった福芋こごせっ子は、立春から1カ月だけ一般消費者向けの販売を行うそうです。この記事を見て、福芋こごせっ子に興味があれば、購入を検討してみてはいかがでしょう。購入については立春・2月限定販売(外部リンク)内にあるフォームからの入力、もしくは電話(080-9601-1726)で「立春・限定の福芋こごせっ子」と伝えてください。 電話の受付時間10:00〜18:00です。

Withこごせコンソーシアム(外部リンク)
住所:大阪府南河内郡千早赤阪村水分441
TEL:080-9601-1726
アクセス:千早赤阪村役場前バス停から徒歩14分
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この記事を書いた人
奥河内から情報発信
大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。

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