今年の秋はちはや園地にミャクミャクが着座したこともあり、いつもとは違う人が多く金剛山に登っていますね。回数登山をしている人はちはや園地と伏見峠口との往復が基本だと思いますが、せっかくなので地元金剛山のお土産も見てほしいところです。

昨年4月に千早本道の登山口で豆腐の製造販売や金剛山のお土産、さらにモンベルのショップも経営している山の豆腐・まつまささんにインタビューしました。
※アーカイブ記事なので情報は掲載当時(2025年4月25日)のものです
バスの時間待ちで金剛登山口バス停前にあるお店でコーヒーを飲んでいた時のこと。常連さんらしい男性が「あそこの豆腐はうまいで」と話しているのが聞こえました。続けて「今日はひろうすを買ってきたんや」と。ここで小耳にはさんだ「美味しい豆腐」とは千早赤阪村でも金剛登山口にある「山の豆腐 まつまさ」さんのこと。実は私も大好きで、先ほど立ち寄り木綿豆腐を買ってきたところでした。
まつまささんは、ノバティながのやフォレスト三日市にも月に1度出張して豆腐の販売を行っているので、河内長野でも知っている人が多いのではないでしょうか。

この4月から千早赤阪村の地域担当になったのですが、真っ先に頭に浮かんだのがこのまつまささん。さっそくインタビューを申し込んだところ、まつまさ有限会社代表取締役の松本公成社長が快く応じてくださいました。
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1.凍り豆腐を止めたのち、生の豆腐作りに戻る

タイトルにも書いた通り、現在は14代目となる松本公成社長(以下、公成さん)。店の創業は、なんと1777(安永6)年です。これは江戸中期にあたり、10代将軍徳川家治の時代。海外ではアメリカ独立戦争が行われていた年です。公成(まさのり)さんの話では、もともとは凍り豆腐(高野豆腐)を作っていたそうです。この地域は標高500メートルの金剛山麓にあり、冬がとても寒い地域なので、凍り豆腐を作るのにとても適していた場所。当時は何軒も同業のお店があったそうです。

転機があったのは先代(十三代:松本昌親さん)の時代です。公成さんのお父さんに当たる昌親さんは千早赤阪村の村長を2004年から2020年まで務めた方なので、村の方はみなさんご存じかと思います。先代は、凍り豆腐ではこれから先細りになると判断し、いったん豆腐づくりをやめて、椎茸(しいたけ)や春雨の生産を行いました。当初はそれでよかったのですが、1994年9月に関西国際空港が開港すると、海外から安い生椎茸が手に入るようになってしまい、価格面で苦戦を強いられます。

そこで新しいことを始めようとしたときに、代々豆腐屋さんだったので、豆腐を復活させることにしました。その時に従来の凍り豆腐ではなく、生豆腐を作ることになったのです。その背景には冷蔵技術が進化したことがあげられます。生豆腐でも車で持ち帰ることが容易になり、それだったら凍り豆腐よりも金剛山の名水を使った生豆腐のほうが人気が出ると考えたのです。

そして、金剛山を巡る動きも生の豆腐の販売への後押しになったといいます。それは金剛登山です。金剛山は大阪府で最も高い山で、初級者から上級者まで楽しめるコースがあるため元々人気がありました。
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公成さんの話ではその人気を加速化させたのが、金剛山山頂にある葛木神社の先代宮司が金剛錬成会を組織し、回数登山のシステムを始めたことです。金剛練成会(外部リンク)によれば、1962(昭和37)年設立の金剛登山会を前身とした団体で、100回以上の登山者を表彰している団体です。
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金剛山を回数登る人は南河内に多くいます。私が知っている限りではバスの定期を持っている人、さらに驚いたことに足を怪我しているのに休まずに登山だけは続ける人がいます。1万回以上の達成した人も何人もいます。それだけ多くの人が山登りに来ることもあることから、生の豆腐を買ってくれる人も多いだろうと判断したのです。

金剛山登山する人の多くは、まつまささんの山の豆腐の前を通る千早本道から登る人が多く、毎週・毎日登山するもとても多いとのこと。また回数登山の人を見ることで一般の人も「安心して」登ってくれるため、自然と人の往来も増えていました。

(現在通行止めとなっている旧道・千早洞)
さらにバスもかつては狭い道しかありませんでしたが、今では大型のバスも出入りできるほどの道路が登山口方面まで続いていることも追い風となりました。
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「まるで心斎橋かと思いましたよ」と、公成さんは何回かの登山ブームだったころの話をしてくださいました。今はそこまでではありませんが、午前中を中心に河内長野駅前でバスを待つ登山客がたくさんいることからも、今でもとても人気が高いです。
2.先代が選挙に出るから後を継いだ

現当主、14代目の公成さんはもともとは会社員でした。パイプメーカーやコンピュータ関係の仕事をしていました。当時は大阪市内に住んでいましたが、週末になると山の豆腐の手伝いをしていました。代々続いている稼業なので、いつかは後を継ぐ覚悟はできていたそうです。


(千早赤阪村役場前にある楠木正成像)
ところが思っていたよりも意外に早くその機会が訪れました。お父さんである先代の昌親さんが、2004年に行われた千早赤阪村長選挙に立候補し、見事に当選しました。そのため公成さんは28歳の時に後を継ぐことになり、14代目当主になったのです。

「気が付いたら20年以上になりました」と公成さんは当時を懐かしみます。すでに週末に手伝いをしていたので、後を継いだことでの大きな変化はなかったそうです。

(豆腐作りの現場を見せていただきました)
ちなみに豆腐作りについてのお話を伺いました。まつまささんのお豆腐はとてもしっかりした固豆腐の印象がありますが、公成さんの話では特にアレンジをしない昔ながらの普通の豆腐を作っているとのこと。

公成さんは「これが本来のもめん豆腐の固さなんです」といいます。現在スーパーなどで売られているお豆腐は、「もめん」と書いていても実際には「きぬごし」に近いものもあるそうです。
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ちなみに大豆は国産(北海道)のものを使っているそうです。昨今の物価高に関しては今のところは大きな影響がありません。その理由として国産はもともと高いため、輸入大豆ほどの価格変動の影響は受けないとのこと。

客層は地元の人よりも登山客が圧倒的に多いそうです。登山口の道沿いにはありますが、千早地区の集落はバス道よりも低い所にあって、そこに住宅が密集しています。だからわざわざ坂を上がってまで豆腐を買いに来ることはあまりないそうです。

ちなみに豆腐の設備をこれ以上大きくすると失敗するリスクが高まるので、豆腐の生産量をこれ以上増やす予定はないとのこと。土日が忙しいので、マルシェなどに出ることもありません。ただ平日に月1回ずつ河内長野に出て、ノバティながのとフォレスト三日市で出張販売だけはしているそうです。

ただし、「豆乳なら増やせる」と公成さん。豆乳やおからを使ったプリンなどのスイーツはすでにありますし、これからも多種類の商品開発が出来るかもしれないとのことでした。

そんな山の豆腐さんでは、豆腐以外のお土産品も販売しています。かつて作っていた椎茸は現在仕入れで調達しており、また羽曳野でベーコンのOEM(委託)生産をしてもらったものも販売しています。つまり、お土産品がそろっているので登山客が多く買って帰るそうです。
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3.モンベルと意外な関係?

さて、山の豆腐を経営しているまつまささん。山の豆腐のすぐ目の前にモンベルルーム 金剛山麓店がありますが、意外にもモンベルのお店をまつまささんが経営しています。
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豆腐を作り食品販売している会社が登山用品のフランチャイズ店を経営する。一体どういうことでしょうか?

公成さんの話では、ここは元々は豆腐料理店だった建物だったのですが、コロナ禍をきっかけに来客が激減し閉店することになりました。公成さんが閉店後をどうするかと考えていた時、モンベル出店の話が入ってきました。それは先代の昌親さんがモンベルの辰野勇会長と知り合いだったからです。

モンベルは都会の大きな店ばかりではなく、登山道に小さなショップも展開していて、人気の金剛山の山麓にも欲しいと考えていました。さらに辰野会長にとって金剛山に店を出したいという強い思いがあったのです。モンベルを創業した辰野会長は堺市出身で、1969年にはスイスを代表する山「アイガー」北壁に当時世界最年少として登頂に成功した登山家です。そんな辰野会長は金剛山にとても強い思い入れがありました。

それは小学校高学年の伝統行事として行われていた金剛山の耐寒登山に学校医の事前検診の結果、参加できなかったという悔しい思い出があったこと。その悔しさをばねに体を鍛え、中学生になってから頻繁に金剛山に登るようになります。そのつながりで、やがて世界的な登山家、そして登山用品メーカーの創業者になったのです。

金剛山が「原点」と考えていた辰野会長にとっても、金剛山麓登山口にモンベルの店舗を構えることは念願だったわけだったのです。こうしてモンベルからの後押しもあって、お店の開業となったのです。

そのためには山麓の登山用品ショップはどんなものか知らなければいけないと、公成さんは四国の石鎚山に直営店とFC(フランチャイズ)店があるということで、FC店のやり方を知ろうと実際に現地まで足を運びました。
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FC店は開店して半年で繁盛している様子を見て、「これならうちでもできるかも」と思った公成さんは出店を決意しました。そのまま千早赤阪村に戻ってきたのですが、石鎚山には登らなかったので「なんで登ってこなかったの?」と帰ってから辰野会長に言われたそうです。また黒部立山アルペンルートのお店にも行って、モンベル経営のことを学びました。

公成さんがモンベルのショップの現場に入ることもあり、お客さんから登山のことなどを質問を受けるそうです。公成さんは「金剛山のことなら十分説明できます」と胸を張っておられました。ちなみにモンベルは、山麓店のほか金剛山頂売店にモンベルコーナーがありますが、そこはまつまささんとは経営が違うそうです。

また、最近は海外から金剛山の登山に来られるインバウンドの方も増えてきたそうです。とはいえ「高野山や京都と比べると金剛山はそこまでメジャーではない」と公成さん。もっと多くの人が金剛山に訪れて頂き、豆腐を買って食べてほしいと言われました。

現在のモンベルは飲食店跡地ですが、今後カフェを新たに始める予定はないとのこと。豆腐を作りもモンベルの登山用品販売も、今出来る範囲で無理せずに続けたいといわれました。
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え?自分で豆腐作れるの!
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ということでまつまさの松本公成社長にお話を伺いました。ちょうど先代社長の昌親さんもお店に来られたので、最後に2ショットで撮影させていただきました。江戸中期から続く名店、これからも美味しい豆腐を作り続けてほしいと思いました。

(現当主の公成さん(左)と先代の昌親さん(右))
山の豆腐 まつまさ(外部リンク)
住所:大阪府南河内郡千早赤阪村千早950
TEL:0721-74-0015
営業時間:9:00 – 17:00
定休日:不定休(年末年始、気象警報発令時など)
アクセス:南海・近鉄河内長野駅、千早赤阪村立中学校前からバス 金剛登山口バス停下車徒歩5分
モンベル金剛山麓店(外部リンク)
住所:大阪府南河内郡千早赤阪村千早950
TEL:0721-74-0015
営業時間:9:00 – 17:00
定休日:不定休(年末年始、気象警報発令時など)
アクセス:南海・近鉄河内長野駅、千早赤阪村立中学校前からバス 金剛登山口バス停下車徒歩5分
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この記事を書いた人
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大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。
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