【河内郡河南町】日本古来からある味噌作りに大切な糀の魅力。下河内糀屋で味噌づくりを体験しました

インタビュー記事

冬場の寒い時期に仕込む物といえば最初に日本酒を連想しますが、日本酒以外にも醤油や味噌も冬の時期に仕込みます。いずれも仕込んで置いた後は微生物が活躍することで、酒、醤油、そして味噌が出来上がります。

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(大内御膳)

味噌は日本古来の調味料として、その源流は奈良時代にさかのぼります。山口県湯田温泉の名旅館、山水園の中世の殿様料理を再現した大内御膳では、砂糖・みりん・醤油などは一切使わず、塩や煎り酒・たれ味噌だけで味付けされていました。

(大内御膳)

ここでいう「たれ味噌」とは、味噌に数倍の水を加えて煮出した後、布袋に入れて垂らして作られたもので、まだ醤油が一般的では無かった時代の調味料です。大内御膳を実食させていただいたのですが、現在の調味料と違い、ひとつひとつの味がとてもパンチが効いた直線的な旨味でした。現在は、近世、江戸時代以降に普及した他の調味料を入れることでまろやかさを出しているのかなと感じました。



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(河内長野日野でつくられていた南河内の白味噌)

そんな歴史ある味噌ですが、冬の時期になると南河内地域でも多くの場所で味噌づくりが行われていて、地域によって個性的な味噌を作っています。

そして一般向けの味噌作り教室も、道の駅ちはやあかさかなどいろんなところで行われています。そんな風にいろいろある中で、私はかねてからとても気になっていた場所での味噌づくりを体験することにしました。場所は河南町の下河内です。

その場所は、下河内にある下河内糀屋さん(外部リンク)です。ここでは「こうじ」を「麹」という字ではなく、「糀」の字を使っています。両者の違い(外部リンク)をみると、「糀」は主に米こうじを指していて、それ以外の豆や麦も含めた「こうじ」全般を指すときには「麹」を使うことが多いことが書いてありました。(ただし、明確な意図が定められていないため、どちらを使っても問題ないとのこと)

(2021年撮影)

実は今から5年ほど前に、下河内糀屋を経営している、のえさんが上堂醤油蔵で、醤油づくりを行っているというイベントに参加したことがありました。公式ページにプロフィール(外部リンク)があります。それによると、のえさんは、世界各地を旅しながら各地の食に関する体験を経験したのち、日本帰国後は調理師として働いていました。やがて、自分が食べるモノ、使うものを自分で作りたいという思いとつくる人と食べる人繋がりあう仕事ができたらと、2018年から下河内糀屋として独立しました。

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そんなこともあったので、のえさんに糀屋さんを始めたいきさつなどのお話を伺いながら、実際に味噌づくりを体験することにしました。

こちらが作業場で、のえさんのご実家の敷地内が工房兼教室となっています。のえさん自身は富田林市内に住んでいるとのこと。

じっとこちらを見ていました。教室を行っていて不特定多数の人が来るためか、私を見ても反応せず大人しかったです。

2種類の味噌を作る

下河内糀屋さんでは、2種類の糀(白米、玄米)を使って味噌を作ります。およそ2kgずつ仕込むので、教室では合計4kgを仕込みます。4kgで7,000円の料理教室なので一見高めに感じるかもしれませんが、持って帰る味噌の量と金額の比率を見ると実はとてもお得です。

こちらが玄米糀です。



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こちらは白米の糀です。玄米糀だけだと個性が強いので、白米糀と2種類作ることで、違いを楽しんでほしいという思いもあるそうです。

下河内の山に囲まれたとても良い雰囲気の所で味噌づくりができます。

味噌づくりの工程は実はシンプルです。前の日から水につけてゆでた大豆を用意し、それをつぶしてペースト状にしたものに米糀と塩を入れて密封するだけです。もちろんそのための雑菌の管理や間に空気を入れないなどの様々な工夫があり、それをのえさんが丁寧に指導しくれました。

ビニール袋に入った大豆を、袋の上から手でつぶしていきます。

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この大豆は白米糀用と玄米糀用共通で、つぶしてから分けます。

今回は取材を兼ねていた特殊な事情から、特別にマンツーマンでさせていただけたのですが、通常は複数の参加者で一斉に行われます。そしてつぶす作業をしながらお互いが会話を楽しめるようになっています。

大豆はしっかりとゆであがっているため、柔らかくあっという間につぶれていきます。つぶすときの手の感覚が気持ち良かったです。

途中から、のえさんにも手伝っていただきました。

こうして、ほぼ大豆がペースト状になりました。

ここで糀を入れます。最初は白米用糀。発酵系の食品という共通点があるためか、粒の大きさは違うものの、一見インドネシアのテンペ(大豆発酵食品)にも似ている気がしました。

白米糀を拡大しました。糀については、日本酒作りの時にも出てきます。「モヤシ」と称される種麹を入れて作るという事も日本酒作りの時に習いましたが、その時に見た画像と同じです。詳細はあとで触れますが、下河内糀屋さんは糀も作っており、その自家製糀から味噌を作っています。

次に塩を入れます。これは味噌づくりにおいて雑菌の繁殖を防ぎ、発酵を安定させる意味があります。

ここからいよいよつぶした大豆のペーストを入れます。測りながらやることで、両方の味噌の配分に違いが出ないようにしていました。

大豆のペーストが入っています。

こうして測って2キロ強(多いのは糀や容器の重さ)になったところまで入れました。

ビニール袋には残された大豆ペーストがありますが、玄米糀等を入れるのはこちらで行います。



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玄米糀は白米糀と比べて固めの印象です。実際に食べる玄米と白米の関係と同じです。

こちらが玄米糀です。拡大すると精米で取り除かれる部分がしっかりと米粒についたままというのがわかります。

このように糀、塩、大豆ペーストをまんべんなく混ぜます。

こちらは大豆の煮汁です。こういうのも無駄なく使うわけですね。

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煮汁を入れて硬さを適度に調整します。

混ぜながら、糀というものを始めて作った人や、糀と大豆を混ぜたものを、数カ月放置すると自然に発酵して、うま味成分が凝縮した味噌が出来上がるという事実を結果的に発見した人がとてもすごい人だなと感じました。

混ぜるといよいよ保管用のタッパーに入れます。ここで団子を作ってタッパーに入れておきます。

団子を作る目的は内部に空気を残しておかないためです。この空気抜きにはカビの繁殖を抑えることに加え、味の良い発酵を促すという狙いもあるそうです。

空気の入っていない団子をいくつか作ってからその団子をつぶすようにして密度を高めます。このようにして空気を抜いていくわけですね。こういうやり方は指導を受けないとわからないと感じました。

こうして、大豆ペーストと塩、そして米糀が入った「味噌の素」「仕込み味噌」という状態のものが無事にタッパーに入りました。

上からアルコールで消毒し雑菌の繁殖を抑えます。

のえさんのアドバイスとして、上に酒粕を載せることで雑菌の繁殖を抑える効果があるばかりでなく、酒粕が混ざることで完成した味噌に味の深みが出るとのことでしたので、帰りに酒粕を買って上に乗せて保管することにしました。

もうひとつのほう(玄米糀)もタッパーに入れる手段は同じです。

「参加者さんからの知恵で」というのえさん。袋の中に入った部分がもったいないので、ヘラで取ることで極力無駄を省きます。

こうして密閉しました。

ここからは中に入っている麹菌が活躍します。最初の段階(2週間程度)では他の雑菌の侵入を防止するために、野菜室などの冷暗所に入れておき、それから麹菌が本格的な発酵活動を開始し、秋のころには味噌が完成します。

屋さんを始めるまでの経緯について伺いました

(ヤナギウッドワークスさんに作ってもらったという特注品)

さて、ここからはのえさんが糀屋さんを開くことになった経緯などについてお話を伺いました。のえさんが糀作りを始めたきっかけは、三重県伊賀市にある愛農学園農業高等学校とのつながりでした。



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(画像提供:下河内糀屋さん)

これはかつて千早赤阪村にあった多聞小学校の山村留学にのえさんが参加していて、そのころに知り合った人とのつながりから愛農学園と接点が生まれました。

さらにご縁があり、愛農学園の関係者から発酵作りを学ぶ機会があり、泊りがけで糀のことなどを学びました。その時は自分の家庭で試そうと思っていても、まだ糀屋を開いて味噌づくり教室を始めようとは考えていませんでした。

(上堂醤油蔵から頂いたという糀用の木枠)

2016年頃、のえさんは河内長野の汐ノ宮に住んでいたのですが、そのころにある人物と出会いました。それは、綱本琴さん(イラストレーターの綱本さんの奥様)は汐ノ宮近く東高野街道沿いにある古民家を使ってイベントをしたいとの思いがあり「おかって市」というものを開催することになりました。

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(画像提供:下河内糀屋さん)

その場に味噌と糀を販売させてもらったことがきっかけです。当初は市販の糀を手に入れて味噌を作っていましたが、コストがかかるからということで糀そのものを作ることになります。

さらに、市で味噌の販売をおこなったことで、味噌や糀が欲しいという声を聞くことが増えてきました。ちょうど三人目のお子さんが保育園に入ろうということで、仕事を辞めていたタイミングだったのえさんは、思い切って糀屋になることを決意します。こうして糀屋さんとして開業することになったのえさんは、やがて上堂さんとの接点が生まれます。

突然上堂さんからメッセージが来て、上堂醤油蔵の活用について相談がありました。のえさんが上堂醤油蔵に行くと、ちょうど掃除が終わったタイミングだったそうです。

こうして上堂さんと話をした結果、醤油蔵で醤油づくりをすることになりました。

のえさんは兵庫県養父市で昔ながらの本物の醤油を作っているという大徳醤油さんに行って学んだうえで、2019年から醤油づくりのプロジェクトがスタートしました。そして現在に至っています。

(画像提供:下河内糀屋さん)

そして今回私が実際に体験した味噌づくりも、2018年ごろからスタートしました。当初はお店から呼ばれたときに訪問して年1回くらいの範囲で行っていましたが、昨年の夏ごろから本格的な味噌づくり教室をスタートします。

そして、今年は多くのお客さんが味噌づくりに参加されたことで、ニーズが高いことを知ります。味噌の販売よりも味噌づくりを広めたいという思いがあるそうです。

背景には同じ単価の製品を販売しても、スーパーの市販品などと比べるとどうしても割高に見えてしまいます。それに対してワークショップ形式にすると、逆に「お得」にみられることも要素として大きいからといいます。

今後の展開について

(最後に異なる糀で作った味噌を試します。味噌として味わうほかにみそ汁風にしても確かめます)

のえさんは今後について、味噌を食べる人が減り、昔からある味噌屋が廃業しています。今後も多くの人に味噌や糀を食べてもらえるように製造したいです。また、味噌教室や発酵教室を通じて自分で作る楽しさを広めていけたらと思います。

(手作り糀の味噌はお湯だけ入れてもみそ汁として楽しめました)

今住んでいる富田林で畑をしているというのえさん。閑散期を利用して収穫したニンニクや玉ねぎを使って、たまねぎ糀とにんにく糀の教室を開催したり、「にんにく糀」は販売をしています。

(甘酒は年中売れるそうです)

最後にのえさんは、味噌などの発酵系の食品を作る際には素手のほうが良いといいます。それは素手の中にある常在菌が入る方が美味しいからだそうで、昔の人は素手で味噌を作っていたことを考えるとなるほどと思いました。また自家製の甘酒もいただきました。砂糖を使っていないのにとても自然で甘い味!驚きました。ほんとうに美味しいです。

ということで、河南町の下河内糀屋さんで味噌作りを体験しました。発酵してからが本当の完成なので、楽しみはもう少し先です。しかし、作る工程だけでも楽しく、また糀のことなどもいろいろと学ばせていただきました。



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なお、3月20日と27日に味噌づくり体験会があるそうなので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょう。

下河内糀屋(外部リンク)

住所:大阪府南河内郡河南町下河内
アクセス:金剛ふるさとバス河内バス停、またはやまなみタクシー下河内広場下車
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この記事を書いた人

奥河内から情報発信
大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。

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