河内長野は歴史と自然に囲まれたところだからでしょうか?かつて人間国宝の人形作家故・秋山信子さんが河内長野在住だったことなど含め、プロもアマも年齢も問わず芸術にいそしむ方が多い印象があります。
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河内長野駅の裏側、長野公園がある山のふもとにある楼閣風の建物「如来会館」で、昨年12月、「わたしたちの宇宙と大地展」が行われ、個性豊かなアート作品を鑑賞させていただきました。
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その中の一枚がこちらです。芸術博士で大阪芸術大学の非常勤講師でもある中島裕司(Nakajima Hiroshi)さんの作品「北斎風ミュオグラフィ」です。河南町に自宅があるのですが、河内長野市内にアトリエがあり、そこで描かれたものです。

これは「ミューオグラフィー」という新しいアートでの分野で描かれた絵です。3月24日から29日まで、グランフロント大阪で、ミュオグラフィーアート展が行われるそうです。
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(中島裕司さん)
それだけではありません。中島さんの活動が認められ、驚いたことにハンガリーから勲章をもらったというのです。

外国から勲章をもらえることがとても気になった私は、「わたしたちの宇宙と大地展」関係者を通じて中島さんとコンタクトを取り、指定された日時にアトリエで取材させていただくことになりました。場所は緑ヶ丘、「通称:サニータウン」です。
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(中島さんから勉強用にと頂いたミュオグラフィの基礎とアートを紹介する冊子)
さて前提として、まずミュオグラフィーアートとはどういう物かおさらいしましょう。このアートを語る前にまず「ミュオン(μ)」なるものを理解する必要があります。
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(画像提供:AI)
ミュオンとは、非常に小さな軽粒子(素粒子:レプトン)と呼ばれるものです。これは物質を構成する基本的な最小単位(原子)の中で原子核の周りを回っている電子も軽粒子です。つまりミュオンも電子も同じ仲間になります。

とにかく小さなものですが、説明によると電子より200倍ほど重いそうです。宇宙から飛んできた宇宙線が地球の大気に触れるときに発生しますが、寿命が2.2マイクロ秒なので人間からすればほんの一瞬です。
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(ミュオンを見つけるための装置)
そして地上には頻繁に降り注いでいる(8時間で人の体を100万個突き抜ける)ますが、人体への悪影響はないとのこと。
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(画像提供:AI)
ここまで書くと、スーパーカミオカンデで検出するニュートリノにも似ている気がしますが、ニュートリノもミュオンと同じ軽粒子(素粒子:レプトン)です。しかし、ミュオンは電荷を持っているのに対してニュートリノは持っていないため「幽霊粒子」との異名を持ち、地球を容易にすり抜ける特徴を持っているため非常に検出しにくいのです。
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(田中教授が行った浅間山の透視でミュオンを映し出すことに成功した)
1936年の段階で、宇宙線の中のミュオンの存在が発見されたそうですが、透視(とうし:X線を用いてモニターに映し出す)が成功したのは2007年に田中宏之教授が浅間山で実験した時です。まだ20年ほど前の出来事で、この火山内部の様子をミュオンの動きで撮影したことを例えていうなら、大きなレントゲン撮影のイメージとなります。

いきなり物理学の話になってしまいましたが、この物理学の世界が、全く接点がないと思われる美術、アートの世界とどうつながっていくのでしょうか?そのことについては、ミュオグラフィアートを紹介する「宇宙に訊ねよ」という冊子に詳しく書かれています。

冊子の中に書かれている中島さんのエッセイを要約すると、中島さんはミュオンの透視に成功した田中教授と2016年に大阪のイタリア文化会館で出会った時に、それを知ったそうです。そこでミュオンやミューオグラフィーを独自で調べますが、調べれば調べるほど一般の人には理解が難しいと感じました。
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(中島さんの作品「ミュオンの目」)
後で詳しく紹介しますが、中島さんは子どものころから絵を描き続けていました。そこで「一般の人にもわかりやすいようにアートと絡めたらどうだろう」と考えたそうです。こうしてミュオグラフィ・アートの世界がスタートしました。

ミュオグラフィ・アートはミュオグラフィという難解な技術を親しみやすく伝えるものです。科学から湧き起こる感動をみんなで共有することを目的に、画家による絵画やデジタルアート、模型などで火山・古墳の透視データを表現するために使われています。
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そして、中島さんのようなプロの画家だけではなく、画学生もミュオグラフィアートに取り組んでいます。「ミュオグラフィ」という技術をテーマに、アーティストたちが自由に描いていますので、これからますます独自の世界が描かれる可能性があるわけです。
ハンガリーから勲章を授与された中島さん

(画像提供:中島裕司さん)
中島さんがハンガリーから勲章受賞が決まったのが2024年7月17日のことで、勲章授与式は2026年1月29日でした。
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(画像提供:中島裕司さん)
これはハンガリーとの友好交流の促進に貢献したということに加え、ハンガリーが国家的に推進する先端科学分野であるミュオグラフィを、アートを通じて国内外に広く発信する活動が認められたためです。
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(画像提供:中島裕司さん、ハンガリーパビリオンのシンポジウム)
「2024年にハンガリー大使から連絡がありました」と中島さん。今回のようなハンガリーからの高いレベルの勲章といえば、過去に都道府県の知事や著名な大企業の社長、人間国宝と称される人が多い中、まさか自分がその対象になるとは思ってもいないのでとても驚いたそうです。

(画像提供:中島裕司さん)
勲章は「ハンガリー国騎士十字功労勲章」で、中島さんと角谷賢二氏(国際美術研究所所長、国際ミュオグラフィ研究所所員、元関西大学総合情報学部客員教授、元学長室シニアURA/シニア研究企画アドバイザー)の2名が今回授章しました。
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(画像提供:中島裕司さん、隣が角谷さん)
中島さん自身とハンガリーは、15年前からのつながりがあります。関西ハンガリー交流協会(外部リンク)が事務局長が高齢となったために代わりをする人を探していたそうで、中島さんが事務局長を引き受けたことがきっかけです。

(画像提供:中島裕司さん)
以降、中島さんとハンガリーとのつながりが続きます。上でも触れましたが、ハンガリーは、ミュオグラフィアートの先進国とも言われています。例えば2021年5月13日から6月4日まで、東京麻布のハンガリー文化センターでミュオグラフィアート展が行われました。
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(画像提供:中島裕司さん)
そして受賞までの間、ハンガリー政府が何度も閣議(勲章委員会)を行ったうえで最終的に決定するのですが、そのために必要な書類の中に母親の名前を書くなど、日本人にとっては馴染みの無いルールに国の違いを感じたそうです。

(画像提供:中島裕司さん)
そして、本来ならハンガリー本国に行ってハンガリーの元首シュヨク・タマーシュ(Sulyok Tamás)大統領から直接手渡されるそうですが、今回は東京の大使館でハンガリー臨時代理大使コバーチ・エメシェ氏より受けたとのこと。得た勲章はハンガリーの最高ランクで5番目に位置するもので、15年の交流と10年のミュオグラフィアートの貢献がハンガリー政府に認められたわけです。さらに以下の功績が認められました。国際美術研究所(外部リンク)より引用します。
日本科学技術振興機構(JST)主催「サイエンスアゴラ」、日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念事業、上野恩賜公園における創エネあかりパークでのアート展示、東京ビッグサイトで開催されたG空間EXPOなど、多岐にわたる事業において、駐日ハンガリー大使館関係者と連携し、その普及および国際的理解の促進に寄与。
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中島さんは勲章を授章したことで「身が引き締まる思い」と感じつつも、これからもミュオグラフィーを広めたいと考えているそうです。

(画像中央の左寄りの茶色い建物がハンガリーパビリオン)
さらに昨年の万博でも、中島さんはハンガリーパビリオンに関係者として関わります。ハンガリーパビリオンでミュオグラフィのシンポジウムを行ったことで、ハンガリーとのつながりがさらに深くなったとのこと。
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せっかくなのでハンガリーの国の特徴を伺うと、人口は900万人程度ながらもノーベル賞受賞者がとても多いそうです。ハンガリー料理といえば、グヤーシュと呼ばれるスープが日本人には馴染だろうとのこと。あとパプリカを多くの料理に使うのも特徴です。
5歳から油絵を描いた!

ミュオグラフィ・アートの世界に貢献し、ハンガリーから勲章をもらった中島さんは、1952(昭和27)年生まれで大阪市出身です。中島さんの住んでいた近所にプロの画家がいた関係で、小さいころから絵に目覚めます。そして中島少年は驚いたことに、5歳の段階で油絵を習い始めたそうです。
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「油絵の画材はとても高いのに、親が揃えてくれました」と、当時を懐かしむ中島さん。そのまま絵を描き続け、中学は美術部に属して石膏デッサンを学びました。しかし、当時の顧問の先生が本格的過ぎたために、多くの部員はそれについて行けずに辞めてしまったそうです。しかし、中島さんはめげることなくついていきました。

(大阪市立大学は大阪府立大学と統合し大阪公立大学へ)
高校になると描くほかに英語の学びも始めたという中島さん。1975(昭和50)年に大阪大学・外国語学部(旧課程)卒業、1979(昭和54)年に大阪市立大学(当時)を卒業します。元々変わったものが好きな中島さんは外国語学部では北欧のデンマーク語を専攻しました。当時日本で唯一だったそうです。
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昭和50年代にシベリア鉄道に乗り、さらに司法試験を?

(画像はイメージ、ベトナムの鉄道です)
中島さんは、学生時代、当時としてはとても珍しいことをしました。ヨーロッパに旅をしたのですが、利用したのが飛行機ではなくシベリア鉄道です。沢木耕太郎さんの紀行小説「深夜特急」の取材が行われた時期(1974年から1975年)とほぼ一致。さらに1980(昭和55)年に太田裕美さんが歌う「さらばシベリア鉄道」より前に中島さんがシベリア鉄道に乗って旅をしたのです。そしてモスクワから鉄道に乗り換えて北欧に行ったそうです。

(画像はイメージ、ベトナムの鉄道です)
「今じゃ忙しすぎてとてもじゃな無いけど」と中島さん。2回の北欧旅行で、シベリア鉄道を計2往復したといいますから、話を聞いているだけでもうらやましいと思いました。

大学を出て友達は就職していきますが、中島さんは絵を描きながら意外なことに挑戦します。それは司法試験、つまり弁護士になるための資格勉強を始めたのです。「弁護士という正義の味方」に憧れて挑戦しましたが、1回挑戦しただけでした。それは向いていないということなのですが、中島さんの学力云々というより、当時の司法試験の世界で行われた異様な世界を見てドン引きしたという方が近かったそうです。
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結局外国語大学での経験を生かして府立高校の英語教師となった中島さんは、高校の美術部の顧問となります。このまま定年まで教師をしたのかといえば違いました。管理職の話がありましたが、興味のない中島さんは、代わりに富田林市にあった養護学校の先生になります。
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「障がいを持っている子どもは、面白い絵を描くことが多く、アートを楽しむことで救われている場合が多い」と中島さん。「当時、養護学校の教え子の中に今度のミュオグラフィアートに参加する子がいるんです」と嬉しそうでした。

その一方で、子供の頃から描き続けている「絵画」のほうも極めようと、大阪芸術大学大学院に進学したという中島さん。2005年に後期博士課程を修了し博士号を取得、芸術制作博士となりました。
後継者を育成しながらミュオグラフィも含めたアートを広めたい

中島さんは後継者を育成していきたいという思いから、サニータウンの中にあるアトリエで定期的(月2回)油絵の教室を開いています。趣味で油絵を習いに来る方がいるのですが、中島さんは油絵の基本的なことだけ指導し、後は生徒さんが自由に描くそうです。

ミュオグラフィも含めてアートをどんどん広めたいと中島さん。芸術系の大学に通う学生にチャンスを与える機会が設けられたらと、大学の関係者とも話をすることが多いそうです。

そして富田林のまちかどミュージアムの様に、アートを行う人だけでなくそれをじっくり鑑賞する人も増やせて行けたらいいなと語りました。
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取材を通じて河内長野サニータウンには、こんな素敵な人がアトリエを持っていることを知りました。

最後に中島さんが多くの人に知ってもらおうと奔走しているミュオグラフィーアート展を紹介しましょう。3月26日から29日の3日間、11:00~16:00の間、グランフロント大阪北館2階「TheLab.みんなで世界一研究所」内アクティブスタジオで行われます。入場は無料です。
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参加アーティストは上の通りです。47名の写真が出ています。様々なジャンルの方が参加しており、中島さんをはじめ、大学の研究者の人や中島さんの学校の教え子だった人、12月の「わたしたちの宇宙と大地展」に参加アーティストなどの作品が見られます。また富田林寺内町の、今昔の玉手箱の亀井ミチヨさんも参加されます。
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中島さんのアトリエ
住所:大阪府河内長野市緑ヶ丘南町
アクセス:緑ヶ丘南町バス停下車
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この記事を書いた人
奥河内から情報発信
大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。

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