河内長野駅西口にはバスロータリーがあり、ノバティながのや長野商店街など商業施設がある一方、東口はお店があるもののどちらかといえば住宅が多く建っている印象があります。しかし、その裏手の石川沿いに、かつて長野温泉街があったことは知る人ぞ知る事実です。
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(河内長野荘)
かつて大仏のある極楽寺に温泉があり、また石川沿いには数軒の温泉宿があったそうで、歌手の故谷村新司さんの生誕地も長野温泉街内の旅館とのこと。

しかし現在ほとんどがなくなり、唯一河内長野荘だけが今でも長野温泉の湯です。あと、おばな旅館富貴亭と八重別館のふたつの料理旅館が、かつて河内長野駅東口に温泉街が広がっていたことを物語ってくれています。
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昔の日本の温泉地はいわゆる「歓楽街」で、長野温泉も例外ではありません。現在の長野公園奥河内さくら公園には当時長野遊園があり、その下にある川沿いの一角の温泉街には長野新地とよばれる遊郭が存在してました。大阪府は戦後しばらく長野新地を「青線」と認識していたそうです。
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そんな時代の名残が今でも石川と天見川の合流地点にある楼閣風の建物です。その名は「如来会館」。今はもちろん旅館などの営業はしておらず、主に教室やライブ会場などで利用されています。
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私はかねてから「如来会館」の存在そのものがとても気になっていましたので、いつか中を拝見したいと考えておりましたが、これまで機会がありませんでした。

そして長年願っていたその機会が、ついに訪れました。12月9日から14日まで「わたしたちの宇宙(そら)と大地」展とよばれる展覧会が行われるという情報を得た私は、如来会館と展覧会を取材させていただくことにしたのです。
如来会館誕生までの経緯

最初に如来会館のオーナーである李 鴻儒(り こうじゅ:Ree Kouju)さんから、如来会館を手に入れるまでのお話を伺いました。
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台湾出身の李さんは30年以上前に来日し、25年ほど前から河内長野に住んでいます。水墨画や太極拳の指導者で、教室を開いて教えています。
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(富田林で行われた太極拳教室、右から二番目が李さん)
今から十数年前、李さんは長野公園(奥河内さくら公園)で太極拳の指導をしたときに如来会館の建物を見つけました。建物は元旅館跡で廃業後にもいろいろと利用されていたのですが、当時は売り物件でかつ建物を壊す予定だったそうです。

「こんな立派で風情のある建物を残さなければいけない」との思いを持った李さんは、台湾の仲間とお金を出し合って物件を取得したのです。

こうして元旅館跡は如来会館(にょらいかいかん)という名前として残りました。如来といえば、大日如来や阿弥陀如来のように菩薩の上にいる仏(仏像)を思い浮かべますが、それとは別に真如 (tatha タタ) の特徴を悟った者という考え方で、「あのように立派な行いをした人」という意味合いもあるそうです。
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李さん自身も文化活動の師匠として活動していることから「ここを文化活動の場にしたい」と考えました。そして、NPO法人芸象万千文化教育学院(外部リンク)として水墨画や太極拳、気功を学びあったりする仲間の拠点のほか、定期的にライブ活動の場所として提供しています。
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そして今回、「わたしたちの宇宙と大地」展のギャラリーの場として如来会館を提供されました。「古い建物で補修も大変だけど、文化的なことでどんどん使っていきたい」と李さんは語ります。
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(李さんの作品)
今回の展覧会では李さんの作品(水墨画)も展示しています。
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「わたしたちの宇宙と大地」展を如来会館で行ったわけ

(画像右が田平さん、左は田平さんの友人でアーティスト「今昔の玉手箱」の亀井美知代さん)
今回の「わたしたちの宇宙と大地」展を企画、キュレータとして来場者とアーティストの間を取り持つのは田平まゆみさんです。

(富田林緑化フェアより)
田平さんは元富田林市議で、副議長も務めた経験がある方ですが、現在はフェミニストカウンセリング・アドヴォケイターとして心の相談室「SPACE HUG」の運営をされています。ちなみにフェミニストカウンセリング・アドヴォケイターとは、フェミニズムやジェンダーの視点に立って、DVや性暴力・虐待被害当事者などを支援、代弁擁護する活動を担う人たちのための資格(外部リンク)です。
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(ウクライナ画家国際交流展で送られた画像データを「表装(ひょうそう)」にして展示中)
田平さんによると、最初、大阪市内で日本語学校の講師になるために学びをしていたところ、日本語学校の生徒として来ていたウクライナ人の画家、ニナ・ブチェバ(Nina Butieva)さんと知り合って交流が始まりました。
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やがて田平さんのお父さんである画家の山中孝夫(Yamanaka Takao)さんとのつながりから、山中さんの持つ大阪市東住吉区にある画廊「アトリエ観(みる)」において、3月に「ウクライナ画家国際交流」展が行われました。

(如来会館から見える石川と天見川の合流点)
この展覧会を機に、李さんや今回参加しているアーティストの方々とつながり、「みんなで展示会」をしようと盛り上がりました。場所はいくつか候補があったのですが、元旅館を文化拠点としていた如来会館をアーティストの方々がとても気に入り、如来会館での展覧会が実現したのです。

では、「わたしたちの宇宙と大地」というタイトルですが、これは結論を先に言えば、そのタイトルに似合う作品が並べています。田平さんによればまず「平和」をテーマにしつつも、露骨に「平和」というキーワードは入れないでおこうと考えたそうです。
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そして会場となる如来会館の「如来」ですが、実は上記に説明した以外に、おもに阿弥陀如来を重視する浄土系仏教の考え方として「私自身が仏(如来)の真実の姿に目覚める」という意味があります。それは「私が如来になる」という考え方。そこで会館名から「私自身=私の本来の姿」と掛け合わせた展覧会名になったそうです。
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(山中さんの作品「祈り」)
なお、今回は山中さんの作品も展示しています。
ウクライナのアーティストニナさんと11人の画家たち

(初日午後に行われたレセプションの様子:画像提供 井上さん)
取材時は初日ということもあり午後にレセプションが行われていました。私が訪問したのが夕方だったので、残念ながらそれには間に合いませんでしたが、参加アーティストの多くの方がまだ如来会館に留まっていました。

ウクライナの画家のニナさんは、住吉区での展覧会同様に11人のアーティストとともに展示会に参加しています。ニナさんによると2009年からウクライナで美術活動を行い、2015年からは講師として活躍していたのですが、戦争が始まった3年前に日本に来たとのこと。

こちらの作品は「ウクライナの海(黒海又はアゾフ海)」を描いたもの。ニナさんによると休む間も惜しんで3・4日で仕上げたそうです。

また祖国の砲撃被害者への支援を募っています。
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(レセプションで挨拶するニナさん:画像提供 井上さん)
ニナさんは現在大阪市阿倍野区在住です。

2024年には阿倍王子神社に絵馬を奉納しているほど今では日本の生活にとてもなじんでいます。
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回る球体は五次元の世界を表している!

今回の「わたしたちの宇宙と大地」展は二次元の絵画がメインですが、三次元などの立体の作品の展示もありました。
そしてこのように回転を続けている作品「のしてんてん」があります。

ところが説明を見ると、のしてんてんは三次元どころか五次元宇宙といいます。四次元ならまだしも五次元となるともはや想像できませんね。
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作品を創作した北薮 和(Kitayabu Waa)さんは、世界を思い描くための5つの概念を表しているとのこと。三次元までは普通に見える物質と空間の世界で、これに心が見る世界を四次元と表し、さらにスケールの疑念を取り込んで右の図を表すのが五次元世界とのこと。

各次元を探査する船の紹介です。①の三次元はロケット・宇宙船で探査するもので、現実的に知っているものです。②の四次元はタイムマシーン、これは漫画・アニメや映画などの物語の世界で登場しているので名前だけは多くの人に知られています。
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(空間絵画「のしてんてん」と北藪さん)
しかし、さらに③五次元まで来るとスケールマシーンとなるとのこと。スケールマシーンは現実に存在するものとして、長さや寸法を測るための測定器具のことです。しかし、ここではスケールの世界(巨大な銀河レベルから極小の素粒子レベル)を自由に移動できる乗り物としてその名前が登場します。

五次元世界のほうにばかり注目してしまいますが、「のしてんてん」は鉛筆1本で描いたという鉛筆画(ペンシル画)です。実はそれもすごいのです。

「のしてんてん」の五次元世界は非常に難しい考え方ですが、北藪さんが会期中、1日2回解説タイム(13:00~、16:00~ 30分程度)を設けています。興味のある方は解説タイムの時間に行って北藪さんの話を聞いてみてはいかがでしょう。
可愛い作品のアーティストは定年後に本格的創作活動を

「この作品の作者が私だと知ったらみんながっかりするかな」と謙遜されるアーティストは、森 敬司(Mori Keiji)さんです。
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ただ可愛いだけではありません。張り子の虎のように頭が動きます。森さんによれば「朝の散歩で出会った人たちの立ち話」をコンセプトに作られた作品です。実は段ボールでできているそうで、段ボールに和紙を張り付けて色を付けて作ったとのこと。
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河内長野で段ボールといえば大阪ケース工作所のORIGAMI工房さんを思い出しますが、段ボールって本当に可能性のある素材なんだと改めて思いました。

森さんは絵心はあって美術部に属してはいたものの、現役時代はデザインの仕事や工場で働いていて創作活動をほとんど行っていなかったとのこと。本格的に創作活動を始めたのは定年後とのことで、13年のキャリアがあります。

動物をイメージして擬人化した人形たち。「こちら自由に手に取って感覚を触ってください」と森さん、実際に作品に触れられるのは素敵ですね。
あの躍動する馬を描いた方の師匠も

田中建司(Tanaka Tateshi)さんは、自然が好きということで自然をモチーフにした絵画を中心に描いており、日展に19回も入選する実績を持っています。そして「描こう会(かこうかい)」という写生をするグループ活動の絵の指導も行っています。

田中さんは、こちらの馬を描いた市内在住の生徒さんの先生です。この馬の絵はとても好評だったそうで、いろんな馬のシーンを書きたくなった生徒さんに「いろんな馬のシーンを書きたくなったら全部一枚の絵にしたら良いよ」と田中さんがアドバイスしたから実現した作品なのです。

田中さんは横幅が162.1cmもある100号の絵などを手掛けていて、毎日のように絵を描いているとのこと。さらに横幅が259cmもある大きな200号の絵にも挑戦しているそうです。
集まっている人たちの共通点は「良い人」

私がいた時に在廊されたアーティストの方を先にご紹介しましたが、このほかのアーティストの作品も触れていきます。こちらは芸術博士で大阪芸術大学の非常勤講師でもある中島裕司(Nakajima Hiroshi)さんの作品「北斎風ミュオグラフィ」です。

こちらは書道家の東野舜水(Higashino Syunsui)さんの作品です。
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そしてこちらは油彩画家の畑森寛ニ(Hatamori Kanji)さんの作品です。

ということで、日本、台湾、ウクライナと3つの国の9人のアーティストとウクライナ出身のアーティストグループの作品が見られるわたしたちの宇宙と大地展をご紹介しました。様々なアーティストが集まった今回の展覧会の共通点を田平さんにお伺いすると、「良い人!」。実際にお話を伺った方々は確かにみんな「良い人」でした。
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なお期間中、金曜日と日曜日には以下の催しも行われます。
12/ 12(金)14:00〜
書道&水墨画のライブペイント(東野舜水さん&李鴻儒さん)
15:00〜 台湾茶会 参加費 ¥500 (李さん)
12/ 14 (日) 12:30-15:00頃
ボルシチ・パーティ 参加費 ¥1,500 (ニナさんのボルシチ/30食程度用意/要予約)

(画像提供:井上さん)
ということで、如来会館で14日まで行われている「わたしたちの宇宙と大地」展を紹介しました。入場は無料でどなたでも自由に見学ができます。如来会館の外観が気になっていてもなかなか入る機会が無いので、またとないチャンスです。そして「良い人」が集まった作品の数々をじっくりと眺めてみてはいかがでしょう。田平さんは毎日常駐しているそうです。

如来会館(わたしたちの宇宙と大地展)
住所:大阪府河内長野市末広町2-37
開催日時(11:00~17:00 12月14日まで)入場無料
アクセス:南海・近鉄河内長野駅から徒歩4分
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この記事を書いた人
奥河内から情報発信
大阪府河内長野市在住の地域ライター・文筆家。2021年に縁もゆかりもない河内長野に移住し「よそ者」の立場で地元の魅力・町が元気になるような唯一無二の文章執筆、情報を発信しています。



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